mosca cieca8







key:




目の見えぬその眼(まなこ)で
ほら、追いかけろよ(追いかけてやるよ)

終わらない(終わらせない)

2人だけのmosca cieca






mosca cieca8






あの爆破事件の後、住む所がなくなった俺はひとまず本部へと滞在することになった。
長期休暇も強制終了となり、安全面の配慮もしなくてはいけないということで現状軟禁に近い状況デスヨ、ハイ。

そして、今は行儀悪く靴のまま俺のために作られたという革張の椅子に体育座りをしてロリポップを舐めながら書類を見ていた。


・・・あの爆破事件のあと駆け付けたベルナルドに呆然と突っ立ていた俺は本部へと連れて行かれた。
本部に着くと心配そうな顔をした幹部達に出迎えられ、心配かけたな、と思うと同時にバクシーのことしか考えていなかった自分に気付かされる。

いつのまにか俺の頭ン中はアイツのことでいっぱいで。

敵だったはずなのに、世話をすることが、あいつが笑ってくれるが嬉しくてたまらなくて。

無事なのだろうかとか、まさかあの爆発で死んじゃいねぇんだろうかとか気がついたらそんなことばっかり考えちまう。

どうしようもなくあいつに乱されちまう自分に腹が立ってつい飴を噛み砕く。


「・・・・ファンクーロ。」



ベルナルドに差し入れとして置いていってもらった机の上に置いてあるロリポップからまた適当に一個掴み取り口に入れる。
包み紙を乱雑に破りポケットに突っ込むと少しごわついた感触が手に当たった。
ストロベリーの甘さが口に広がるのを感じながら手に持った書類を机の上に置くと包み紙と入れ替わりに俺の部屋に置き去りにされた包帯を取り出す。


つい持ち帰ってしまった包帯。
あのときからなぜか手放すことはできなくて薄汚れてしまった包帯を後生大事に持っている自分に笑いたくなってしまう。


ただの暇つぶしだったのになぁ、こんなにもはまってしまうなんて。
首についた奴の噛み痕を指でなぞるとぴりぴりとした痛みが走る。
どうせならあいつも傷が痛んでればいい、噛みつき返したときの顔を思い出して少しは鬱憤が晴れるような気がするし。

カタカタと窓が鳴る音に舌で飴を転がしながらふと窓の外を見ると今にも雨が降りそうな雲が広がっていた。
いや、今の時期じゃ雪か?あしたにゃクリスマスだもんなー。

時間の流れってのは早い、もうあっという間にあの事件から数日たって、クリスマスと来るんだもんな。
そういや書類もクリスマスの寄付とかあったけか。


・・・仕事しねーと。


しかし、どうにも気分が乗らず机にも向かう気にもならない。
・・・よしいっちょココは気分転換だよな!!

椅子から立ち上がり口にまだはさんでいた白い棒きれとかしてしまったロリポップの残骸を口から抜くと部屋の端に設置されている大口開けたゴミ箱へと狙いを定める。



「ジャンカルロ選手、この1投にすべてをかけマス。シュートーー!」

ポイっと放り投げた白い棒は綺麗な放物線を描き、なんとも間抜けな音を立ててゴミ箱のふちに当たりゴミ箱の外に落ちた。



ちぇ、ハズしちまったかー。
仕方ないあの棒はカポの期待に添えなかった罰であそこで眠ってもらうとしようじゃねぇの。
あとで、だれか片付けてくれるだろうとそのまま放置しようと決め込んだ俺はようやく仕事をしようと机へと向かい口の中にある飴を転がそうとしたところでようやくその存在がないことに気づいた。

「あ、れ?」
「へったくそだなァ、子猫ちゃわぁんは?」

後ろで最近ずっと聞いてきた声と何かを噛み砕くような声が聞こえる。
そしてなぜか閉めていたはずの窓が開いて軋む音が耳に響く。




―――まさか




「ほら、こういうのはこうやりゃいいんだぜェ?」

ひゅんという風を切る音とかこんという音で俺の口の中にあったものは俺の時とは違い無事に本来の場所に入ったことがわかる。
・・・速すぎて軌道は見えなかったが。




―――嘘だ




「しっかし、テメェはこんな甘ェもんよく舐められるよなァ?」
「バク、シー。」



・・・後ろを振り向くと相変わらずのド派手なパーカーに輝く銀髪。



そしてしっかりと俺を見つめる銀色の瞳。



にやにや笑って俺をみつめてくるバクシーを俺は信じられないような目で見ていたんだと思う。
しばらくにらみ合った後ぐっと腹に力をこめコイツは、俺じゃないCR:5のカポに用があってきたんだといい聞かし、動揺を悟られないように細心の注意を払いながらバクシーに問いかけた。



「・・・何の用だ?」
「そんなカリカリすることもあんめぇ?俺は今日はあんたらイタ公と喧嘩しに来たんじゃねぇからヨォ!」
「じゃあ、なんのためにここにきたんだつーの!」


その俺の問いにバクシーは真剣な目になって俺を見つめてきた。
あまりの鋭さに俺はヤツから目が離せなくなってしまう。


「・・・・俺はゲームをしてたんだけどよ、飽きたら終わりつーよォ、なんてーかオママゴトみてぇなもんか?しっかし全然飽きるどころか面白くて仕方ないんでなァ。ゲーム変更。鬼ごっこをすることにした。」

「な、にいって。」

「必ずソイツを捕まえてやるって俺が決めた。」


コツコツと靴音を響かせてバクシーは俺に向かってくる。
俺は動けない。







「つーかまえたァ、ジャンカルロ。」







「・・・・意味分かんねぇ、よ。このキチガイヤンキー。」
「そんな俺様に惚れちまってんだろ?」
「知るか。」



抱きしめられたままその広い背に手を回すとより一層力強く抱きしめられる。
俺もそのままバクシーの胸に顔をうずめた。

そして俺達は体を少し離しその分を埋めるように顔を近づける。
浅く啄ばむように口づけ合いながら俺はバクシーに椅子に押し付けられた。
そしてバクシーは俺の膝の上に乗り上げる。ぎしり、と悲鳴を上げるように椅子が軋んだ音をたてた。




そのままバクシーは俺の頬を両手でそう、と包み込むように持ち、…そのまま口づける。
ざらり、歯列を舌で舐めあげられ、そのまま深く侵入しようとし、止まった。

「んっ・・・?」
「まだわかんねぇのけ?お嬢ちゃんは。」

ククッと笑うバクシーに腹が立ちながらも実際普段と違うキスにどこかひっかかていたのも確かで。


「しょうがねーナァ。じゃあ特別ヒントだな。」



そういうと俺の手にずっと握られていた包帯を取ると俺の目に巻いていく。
閉ざされる視界とともに俺はやっとその答えが分かった。

「あの時と逆・・・か?」
「ピンポーーーン!!!正解だぜェ?鬼ごっこてのは捕まったら逆になっちまうもんダロ?」









「テメェが誰だっていい。この関係・・・目が覚めちまってもゲームオーバーになんかさせねぇよ。」









あの時の俺と似ていてまったく異なる言葉に俺は白く覆われた視界の下で大きく目を見開いた。




write by 【マクロファージの食べた夢】 master 【セイ】
pict by 【G*G】 master 【ほづみ】





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