mosca cieca7







目の見えぬその眼(まなこ)で

ほら、追いかけろよ(追いかけてやるよ)

終わらない(終わらせない)


2人だけのmosca cieca




mosca cieca7








「うっ・・・あ・・・ああん!!」


後ろ手に縛る目的で放置してある服のせいで、俺は手で口を押さえることも許されず、
覆いかぶさってくるバクシーに揺さぶられ、あられもない声をあげ続けた。


「くっそ・・・ひああ!!・・んぁ・・・おい・・いい加減イカせろぉ〜」


泣きそうな自分の声に舌打ちをしたいが、その余裕すらバクシーは与えてくれない。

俺の首や頬、唇にキスをしながら、いつも以上の激しさで俺を攻め続けているバクシーの野郎は、既に3回はイッた。
なのに、俺は一回もイッてない。
イキたくてもイケねえんだよ。

だって、バクシーの長い指が俺のブツをギュッと握りしめてるから。
何度イカせてくれと乞い願っただろう。
その度に、バクシーはそんな俺のエロい声を揶揄して笑ったり、口付けで無理やり黙らせたりするだけで、イカせてくれなかった。


もう限界だっての!!


「おい!!・・ひゃ・・・ああん、もう無理!!イカせろ!!まじで!!はあん!!」

「はっ!!相変わらずイイ声で鳴くよなあ!!・・・くっ・・・・ああ、堪んねえ〜・・・」



俺の懇願を聞き入れるどころか、更に怒張したブツを遠慮なく抜き差しされ、俺は背を反らし悲鳴じみた嬌声をあげさせられた。
しかも、塞き止めている手の指で、時折思い出したかのように先っぽ抉るのだから、
イカせないつもりなのかイカせたいのか分かんねえってんだよ!!


いつもなら、こんな焦らしたりしないで、もっとイケとか声を聞かせろとか要求が多いのに。
なんで今日は抱き方が違う?



「しつこい・・んだよ!!イカせろよ!!」

「なんだよっ・・・こういうのもっ・・・いいだろお!!?楽しめよ?・・・はっ・・・忘れられない夜にしてやるよ!!」


そう言いながら、より強く奥の感じる部分を突き刺すように擦り上げられた。


「うああ!!」


忘れられないだって?お前の方こそ、時が過ぎたら忘れるに決まってるのに!?
俺だけ覚えてろってのかよ。
こんなことされなくても、忘れられない自信が十分すぎるほどあるってのに。


「も・・やだ・・イカせろよ〜・・・ああ!!」


弱り切った泣きじゃくる子供のような声で懇願すると、バクシーは動きを一回止め、俺の頬を舐めて涙をぬぐった。



「しようがねえなあ〜?・・・ほらっ!!イケよ!!」



スルリと、長い手が戒めを解くと同時に
バクシーはググっと一気にデカイ物を抜き去り、そして抜く時以上の速度と威力で突き上げた。



「ああ!!ああああああああああああああああ!!!」



目の前がスパークする。

俺は背をのけぞらせながら、自分でも驚くくらい大量の白濁をまき散らした。
同時に内部に叩きこまれた、バクシーのが注ぎ込まれる感覚に体が震える。



「あ・・・あああ・・・・・あ・・・。」



我慢させられていた分、快感は激しく、全てを吐き出した俺はグッタリと崩れ落ちた。
このまま眠りたい気分だ。



「くっ・・・はあ・・はっ・・・・。」


肩で息をしていたバクシーの顔が近づいてきた。

シュルリ・・・


「あ・・・」


奴の目を覆う包帯がすべるように滑り落ちて、鋭い銀色の瞳が俺を貫いた。



え?目が・・・あった?



確認しようとするも、瞬きした間に視線はそれ、バクシーの視線は俺の顔から少しずれた硬い床に固定されていた。

気のせいか?

本人に尋ねようかと思ったが、俺には口を開く間も与えられはしなかった。
何故なら、バクシーが俺の首元に顔を埋めたせいで、彼の瞳が隠れたのもあるが、
首に遠慮なく噛みつかれ痛みで思考がぶっ飛んだからだ。



プツリ



肉を貫く嫌な音がした直後、怒涛のように痛みが押し寄せ、俺は耐えるという考えも浮かばず叫んだ。



「痛ってえええええええええ!!!」



暖かいものが首を伝わる感触がしてゾッとした。
血が流れる感覚だ。

喰われる。

まさか、被食者の気持ちが分かる日が来るとは思わなかった。
いや、それ以前に頸動脈切れてないだろうなと焦るが、
それを察したのか、バクシーは俺の血で赤く光る口を弧にしならせ、こちらに顔を向ける。


「急所くらい心得てるっつーノ。安心しろ、頸動脈プッツリは勘弁してやる。
いま、お前が居ないと、俺ってば何もできね―シなあ?」

「なんで、こんなこと!!?」


縛られてるせいで拭うこともできない血を、俺の代わりにとでも言うのかバクシーに舌で舐めとられ、不本意にも体が震えた。

そのエロい動作とは裏腹に、バクシーは悪戯坊主のような顔を俺に向けてこうのたまった。



「噛みつきたくなったから?」



気持ちの良い笑顔を浮かべても可愛くありません!!


「獣か、お前!」



俺は遠慮なく突っ込みを入れると同時に、いまだ何もない空間に向けられているバクシーの視線を眺め、
先程、目があったのは気のせいだと確信した。



「なんなんだよ・・・もう」


「ほれ、もう血は止まっただろ。ま、お前は俺の獲物だからな・・・マーキング?」


「へ?」


そんなことを言われたら・・・執着されてるって誤解するじゃねえか。

コイツに限って、それはあり得ない。

俺は自分の中に芽吹きそうになる期待を、自ら踏みにじり無かったことにした。
そして、余裕の笑みという名の仮面を被り、腹筋を酷使して上体をあげるとバクシーの首に噛みつき返してやった。

プツリ

同じ音がして、同じような傷を負わせると、熱い血が滴り落ちて俺の胸に墜ちた。
その熱さを感じただけでも、心臓が跳ねる。



ああ  俺は狂っちまった。    コイツに  狂わされた。



「痛えじゃねえか!」


顔をしかめるバクシーをせせら笑い、あくまで余裕の声で応対する。


「仕返しだ、バーカ」


ククッと笑うと、バクシーは拗ねた表情のまま乱暴に口づけを落とし俺の笑いを封じた。

おいおい、もう1ラウンドかよ・・・・。

呆れつつも意外にも優しく口内を愛撫する舌に、自分の舌を絡めてしまう。


「んっ・・・・・・。ってか、いい加減に腕を解け!!」

「あ〜。忘れてた」


ウヒャヒャと軽快に笑うアホづらに溜息をつきつつも、感じた愛しさを無視するため、俺は奴の頑丈な腹に蹴りを入れてやった。












翌日、いつものように買い物に出掛け、ベルナルドへの報告の電話を入れた。


「え?・・・いま、なんて言ったんけ・・?」


軽い調子で言おうとして失敗した。声が震えている。

対するベルナルドは、心底安心した様子で、長い溜息を洩らした後、落ちついた声で同じ事を繰り返し言ってくれた。


『だから、お前のアパートが爆破されたんだ。
消防車とか警察が駆けつけて大変なことになってるぞ。お前が無事でよかった・・・。ジャン、今すぐ本部に戻って・・・』


「っ!!!!!!」


ガシャン



俺はまだ何かを告げる受話器を放りだし、隠れ家へと全力疾走した。


既に鎮火したのか、現場は人だかりができているものの落ちついていた。
そんな中、俺は一人焦った表情で、数名の制止を振り切ってバクシーが待つ部屋へと突入した。






「!!っ・・はあ・・はあ・・バクシー!!」



焦げた匂い、黒色に染まった壁や家具。
未だ残る熱気と、爆破によって不自然に消失した壁から吹きこむ冷たい風とが、ジャンの感覚を錯乱させ現実味を喪失させた。

爆破されたのは、バクシーがいた寝室だった。
よろけながら寝室に足を踏み入れる。

最悪の事態を予測していた俺にとって幸いなのは、寝室に人の気配は全くせず、血痕や焼け焦げや人体が無かったことか・・・・。


バクシーは・・・逃げたのか?


GDがバクシーを追ってきたのか、たまたま俺を狙った襲撃なのかは分からないが、分かるのはここにバクシーが居ないことだけ。

呆然と立ち尽くす俺の視界の端に白いものが映って、無意識に視線を向けると、
爆風に吹き飛ばされたのだろう、部屋の隅でクシャクシャに丸まっている包帯があった。

バクシーに俺が巻いてやった物に違いない。


それを取ろうとして、手を伸ばす。


ドサッ


俺の足元で、静かな部屋では妙に目立つ音がしたので、伸ばした手を止め下を見る。
大量に買い込んだ食材の詰まった紙袋が、床に落ちてひしゃげていた。

その時になって漸く、俺は今の今までバクシーに食わせる食材を大事に抱えていたことに気付いた。


カラカラカラ・・・


紙袋から転げ落ちてきた缶詰が、穴のあいた壁から外へと投身自殺した。





write by 【Jukthunden】 master 【片霞宵 ぎる】
pict by【harmless trick】 master 【ソウ巳】




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