mosca cieca6





目の見えぬその眼(まなこ)で

ほら、追いかけろよ(追いかけてやるよ)

終わらない(終わらせない)


2人だけのmosca cieca




mosca cieca6





質素な部屋に重い衣擦れの音と雨粒がぶつかる音が充満していた。
水分を含んだシャツは強い摩擦で小柄な男の動きを奪っている。
脱ぎかけの服を後ろで纏められ抵抗する術がない。
鈍い痛みが関節を襲い、金髪の青年が顔を歪める。
見下ろす形で覆いかぶさる大柄な男は長い腕でそれをベッドに沈める。

「いっ・・・てぇ、何してんだよ・・・」
「何って、ナニだろぉ?んだよ、今更ヤメテェってかぁ?」
「じゃなくて、何で縛るんだよ・・・肩とかイテェんだけど。」
「べっぇつに、意味なんてねーよ。そうだな、あえて言うなら・・・」

もっといい声で啼いて貰おうかと思って、な・・・仔猫ちゃん

一旦挿れたモノをわざわざ引き抜きすることなのか甚だ疑問である・・・
しかし、包帯の下の瞳が笑っているかのように見えたのは幻覚だろうか。


いつものふざけた声ではなく腰に響くような喋り方に鳥肌が立つ。
目が不自由な分他の器官で補おうとしているのか、バクシーは首筋に鼻を近づけジャンの匂いを執拗に嗅いだ。
その仕種にすら自分自身が反応していることに気が付き、思わず逃げたくなった。
身体中を確かめるような手の動きが性的な意味を含まなくても感じてしまう。
大きな手が頭から滑っていく。
髪の毛を掬い上げキスをひとつ落とし、そのまま頬まで降りてきた。
唇が額から瞼を通り過ぎ、鼻、頬、唇へ順に触れていく。
長い指が持て余したように耳をなぞり全身の血液が青くなったような快感を覚えた。




どうしてこんなにも優しいのだろう。
いつもと違うのは何故なのだろう。
普段との違いに怯えながらもしっかりと反応を示す自分に辟易する。
今や彼の声だけで体温が上がる。
それも気付かれないよう、悟られないよう『普段どうり』にしなければならない。
この関係を一秒でも長く続けられるように。




「ァ、ア・・・っあぁ。はぁっ」
熱心に俺の身体を嘗め回し、丹念にキスの痕を残していく。
畜生、あんまり人前で着替えられねぇじゃねぇか。
ズボンとパンツは既に手の届かない位置に投げ出されていた。
両足は限界まで広げられ、その中心に舌が這わせられた。
「あぁっ・・・ん、ふぅっ・・・」
行動を制限され、声を堪えられない。
縛られた手のひらを強く握り締めてみるがまるで効果が無かった。
断続的な水の音の中で広がる甘い啼き声は何時もより卑猥な気がする。
よく喋る相手が黙しているからかもしれない。
爆発しそうな自分自身から口を離した彼はもう一度口にキスをしようと目の前まで顔を近づけてくる。
当たり前のようなその行為に仕返しをしたいと思った。

「―・・・っ!って、なンだ?」





「はっ・・・ザマアミロ・・・っん、あ。ヤ・・・」
「やってくれるじゃネェか。」

無防備なその顔面、というか鼻っ面めがけ思い切り噛み付いた。
お返しとばかりに身体に埋め込まれた指をぐちゃぐちゃに引っ掻き回される。
これが何の音だとかは気にしたくも無い。
直にバクシーの熱がジャンの中へ進入してきた。
ひっきりなしの嬌声に大柄な男も息が上がる。
額に浮かぶ汗に気分を良くし、締め付けを上げてやる。
一瞬痛みに耐えるような表情を浮かべ、腰の動きが止まる。


これが日常であってはいけない。
こんな日々は今だけなのだから。
だったら抵抗してやる。


最後なんて言わせないように。
お仕舞いだなんて言われないように。













write by 【Buona notte】 master 【卯月 葵】
pict by 【堕ちた翅】 master 【鮠深 冽】








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