mosca cieca3





目の見えぬその眼(まなこ)で
ほら、追いかけろよ(追いかけてやるよ)

終わらない(終わらせない)

2人だけのmosca cieca





mosca cieca3







「オラッ!口開けろッ!」

あの日―バクシーを拾ってから、俺たちの奇妙な共同生活は続いている。
こいつは、目が見えない。一時的なのか永遠なのか。
医者に見せてはいないから、判断することは出来ないが、今は確実にその瞳に俺は映らない。
常人離れしているといっても視界を奪われてはただの人。
気配で俺がどこにいるとかはわかるらしいが、そこら辺に転がっている無機物の気配は察知できない。
この間、独りで立ち上がった瞬間、靴をふんずけてこけやがった。
バクシーがこけたんだぜ?俺、哂っちゃいけねぇのかもしれねぇけど腹抱えて震えちまった!
んで。なーんもできねぇこいつの代わりに、俺がその目の代わりをしている。
着替えも風呂もトイレも(仕方がねぇだろ!外されたらこっちが困るんだよ!)全部。
今もこーして、俺はさながら赤ん坊に物を食べさせるように食事を与えていた。

「だぁぁ!なんで零すんだよ!ああ・・・せっかく洗濯したのに・・・」

洗い立てのブランケットとパジャマが、俺特製のスープで汚れていく。
ボトボトとこぼすバクシーは、見えねぇからしかたねぇと呟いて、さっさと次のものをよこせと催促した。

「ちょっと待て!ったく、拭かねぇと沁みになんだろうーが!」

もう、俺。なんでこんな奴の世話してんだろ。
貴重な、ほんとに貴重な長期休暇が、まさかバクシーの世話で終わりそうとか。
俺、マジ泣きそうですワヨ?

・・・・・・・・

なーんて、ぐずってみても元はといえば自分が撒いた種。
甲斐甲斐しく世話しちゃってるのも、自分の意思だから始末に負えない。

「あー・・・もう・・・・」

嘆息しながら、クリーム色に染まっていく毛布を避けてカバーを剥ぎ取る。
とりあえず床に投げ捨てて、水気の多いタオルで俺はバクシーのパジャマを拭き出した。
ぽんぽんと布にタオルを押しつける。
こいつ専用に買ったパジャマ。駄目にしてたまるか!
そんな俺の心境を知ってか知らずか、バクシーはサイドデスクへと手を伸ばす。

「ちょ、お前なに・・・・」
「これ、か?」

見えないながら、置いてあったスープの入った皿を手で探り当てる。
その皿を引っ掴んで、口を大きく開けて喉の奥に流し込んだ。
ごくごくと喉が鳴る。
ただし。
皿の両サイドから大量の液体を落としつつ。
そして、それは俺が拭いている箇所を遠慮なく汚していった。

「バッッッッッファンクーロッ・・・・・・・・!」

真っ白なシーツにまで跳ね落ちたスープ。
べっとべとになったパジャマ。
口端と指先から液体は伝い下がって、取り換えたばっかりの包帯にさえも沁みをつくる。

「お前、マジ死ね!ふざけんなよっ!」
「腹減ってたんだから仕方ネェダロ?てめぇが食わせねぇのが悪ぃ。」
「待てって言ったじゃねぇか!ああ?」
「シラネェー・・・さっさと拭け。ベタベタする。」
「てめぇが汚したんだろうがぁぁぁぁぁぁっ!!!」

腕を伝うスープをペロっと舐めて、バクシーは飄々と言い放つ。
なんだ、これ。俺が悪いのか。いや、今のは確実にコイツが悪いだろ!
ふつふつと怒りのゲージをあげつつ、俺は乱暴な手つきでパジャマのボタンを外す。
露わになったバクシーの胸には、うっすらと色が変わった包帯が巻かれていた。
それも全部外して、傷だらけの肌をこれでもかというほど強く擦った。

「イッ!」

息を詰めたバクシーの声。
ざまあみろ!と心の中で毒づいて、俺はふんと鼻息を荒くする。

「ぐっ、テメ・・・」
「ばーか!自業自得だ。」

痛がるバクシーに笑いながら、俺はタオルを滑らせていく。
口元から、鎖骨。鎖骨から胸。胸から腹。
徐々に下がっていくタオルはあるところでピタリと止まった。

「・・・ここは、自分でやれ。」
「アア?」
「換えのズボン、取ってくっから。」

あらぬところまで零れおちたスープに、俺は目を逸らしてベッドから立ち上がる。
確か洗ってあったよなーと思いながら、歩き出そうとした俺の腕をバクシーの指が掴んで引き戻された。

「なっ、に・・・って、ナニだしてんだ、テメェ・・・!」
「ココも、ちゃーんと拭けヨ?テメェの仕事ダロォ?」
「ふっざけ・・・ンッ・・・!?」

俺の吐こうとしていた悪態が、バクシーの唇に吸い寄せられる。
口角を釣り上げたまま押しつけられた唇は、かさついていて熱い。
突然の出来事に俺は目を見開いたまま、目の前にある白い包帯を見つめていた。

「ン・・・っ・・ふぅ・・・」

吐息が漏れて、甘い音色を奏でる。
暴れようとしてもがっちりと掴まれた腕がぎしぎしと鳴るだけで、どうしようもない。
意外、というか予想外に優しい口づけに、俺はなすがままで。
やっと離れたと思ったときには、息と熱が最高潮に上がっていた。

「な、おま・・・マジ、やめっ・・・!!」

バクシーは俺の髪の毛を鷲掴むと、ぐっと体重を掛ける。
自分のソレに宛がおうとするバクシーに、俺は精一杯の抵抗を試みた。

「拭け。綺麗に、ナァ?」

嫌がる俺を、恐ろしく低い声が言葉一つでいなす。
包帯に覆われている瞳が、鋭く身体を睨みつけて硬直させる。

怖い。
このまま抵抗し続けたら、なにをされるかわからない。
そんな恐怖が頭を巡った。
忘れてはいけない、コイツはあのバクシー・クリステンセンなのだ。

「・・・ッんぐ・・・・」

震える舌先をくっつけて、おずおずと口に含む。
スープの味などするわけがない。雄特有の味が広がる。
柔らかな肉棒の感触に、気持ち悪さが増して、眼尻にうっすらと涙が浮かんだ。

「・・ふっ・・・ぅン・・っ・・・」
「・・・ヘタくそ。」
「っは・・・!!うる、っせぇ・・・ッ、ン・・・」
「んなことじゃあ、イケねぇダロォ?」
「・・テメ・・を、イカす・・ンぅ・・ためにしてんじゃネェ!」
「・・・・見本、見してやらなきゃわかんねぇか?この子猫ちゃんは。」

頭を持ち上げられて、含んでいたソレが瞬時に口から抜ける。
白っぽい糸が口端から引いて、ぷつんと途切れた。
なに?と思った途端、腰を掴まれて体勢が変わる。
バクシーに尻を向けるような格好で跨らされ、思考が停止した。

「俺と、同じようにヤレヨ?気持ちよォォォくさせてやるゼェ?」

カチャリとベルトが外されて、ファスナーが下りる音がする。
何も、何も抵抗できない俺は、今からされることにただ横に首を振るだけだった。
ずるっとズボンと下着が膝下まで抜けて、俺のソレが露わになる。
外気に触れて、身体がぶるっと震えた。

「・・ぁ!」

バクシーの指先が先端に触れて、握りこまれる。
何度かゆっくりと扱いて、バクシーは滑り込ませるように跨った俺の下へと身体をずらした。

「ふぁ・・っ!!!」

ぬるっとした温かいものに包まれる。
それがバクシーの口だとわかるのに、一瞬の間もなかった。
見開いた目に映る、何の躊躇もなくソレを銜える男。
長い舌がちろちろと動いて、俺はぎゅっと目と瞑った。

「ひぅ・・ぁ・・ン・・・」
「テメェ、も・・・ヤレ。」
「しゃ・・・・・べる、なぁ・・・」

せっつく様に口を動かされて、俺もバクシーのソレに唇を寄せる。
動きを追うように、夢中で舌を這わせた。
じんわりと、でも確実に上がっていく熱。
苦しいのと、気持ちいいので、俺は頭が破裂しそうだった。

「んふっ・・ぁ・・ン、ン・・・」
「もっと、奥に・・こう、ダ」
「ァぅ・・ン、だか・・ら、しゃべ・・・ンーーーー・・・!」

喋ると時々歯があたって、ぴりっとした痛みが走る。
背筋がぞわぞわとした。
駄目だ、もうヤバイ。
競り上がってくる快感の波に、身体が崩れ落ちそうになる。

「は・・う・・ン・・ッ・・・・・」
「ん・・・っ・・・」





喉奥に突き上げられるバクシーのソレと、吸い込まれる俺のソレ。
堪らない快楽に我慢出来なくて、俺はバクシーから顔を上げた。
溜まった雫がぽたりと落ちる。

「やっ、ア、ア、ア・・・ッ、イ・・・ンァッ・・・!」
「・・ッ・・・・」

膨れ上がったソレがバクシーの口内で弾け飛ぶ。
ぎゅっと握りしめたバクシーのソレも、その反動で白い飛沫を放った。
びちゃり、と俺の顔を汚して、濡れた唇にも跳ねる。

「ん・・ぁ・・・マズ・・・」
「そいつは、俺の台詞ダァ・・・ゲロマズだなコリャァ・・・」

舌でその液を拭って、俺は眉を顰めた。
生臭い、濃い液が喉を通り抜けて胃に落ちる。
ぐったりと疲れた身体を、スープとセイエキで汚れたシーツに横たえて、バクシーを見た。
取れかかった包帯。その下の眉間には、ふかぶかと皺が寄っていた。
俺と同じように苦い顔をしたバクシーが、見えない瞳で俺を映す。
動いた手が俺の髪の毛に差し入れられて、なんだかとても夢見心地な気分になった。





write by 【ゼロ区】 master 【ヒナキ】
pict by 【SRDT】 master 【壱輝】



key:【 a 】





inserted by FC2 system